見るべきものが尽きない(その1) : 奈良へ

今年初めてのサイクリング。
今回は奈良経由で自転車で実家に帰る事にした。
せっかくなので、奈良でまだ見ていない所を数ヶ所見てまわった。

奈良逍遥 : 京都→奈良(元興寺・ならまち・新薬師寺)→香芝

京都から奈良へは走り慣れたルートを使う。
京都→[師団街道/京町通/裏道]→大久保→[府道70]→木津→[県道754]→奈良。
走り慣れた、というよりは走り飽きた道を淡々と走って奈良へ。
奈良ではまず元興寺を見る。
元興寺は二棟の国宝建築以外にも収蔵庫の中にある五重小塔(ミニチュアの五重塔・国宝)
も見ることができ、十二分に見ごたえがあった。




元興寺 極楽坊 本堂 (国宝)
元興寺は飛鳥から平城京へ移ってきたという歴史ある寺院。(飛鳥に残った方は今の飛鳥寺)
ただ、その伽藍の大半は中世の衰微と共に失われている。
この本堂とその西隣の禅室は、昔栄えた元興寺の僧房(僧が寝起きする場所)
鎌倉時代に分割、改造したものらしい。
柱の位置が本堂と禅室で違っているようなので、結構大規模に改築されたようだ。
寄棟の屋根を持つが、妻側(写真の右側、屋根が台形ではなく三角形に見える方向)
を正面にしているのがめずらしい。




現役の古代瓦
この本堂と禅室の屋根の一部には写真のような古い瓦が残る一角がある。
この瓦は飛鳥〜奈良時代のものらしい。今でも現役で使われている事が驚きだ。
上すぼまりの瓦を重ねて敷く行基葺というタイプの葺き方だ。


元興寺の次は近くのならまちへ。
ならまちは江戸時代頃の街並みが残る趣のある場所だ。




美意識
ならまちのシンボルがこの赤い「身代わり猿」の人形。
災いを代わりに引き受けるというもので、ならまちのいたる所で吊るされているのを見る。
ある町家で、玄関横の小さなスペースに垣根と植物を植えて「身代わり猿」を吊るしていた。
小さなスペースに赤と緑のコントラストを凝縮している。
そのセンスに伝統ある町の美意識を感じた。
[Nikon D200 + Voigtlaender Nokton 58mm F1.4 SL2 / 絞りF2.8]


続いて少し東へ行って新薬師寺へ。
ここは国宝の本堂もさる事ながら、内部の十二神将像が見ごたえたっぷりだった。
(十二体中十一体が国宝。500円切手のデザインにも使われている。)
続いて近くの入江泰吉記念奈良市写真美術館へ。
入江泰吉は奈良の風景などの写真で有名な写真家。
この美術館には写真好きとして前から来て見たかった。
その作品群は入江泰吉特有のウェットな描写が印象的。
霞がかった景色を標準の画角で誇張無く、柔らかい描写で写すのが特徴、だろうか。


本来はこの後、修理が終わったらしい唐招提寺の金堂を見る予定だったのだが、
時間が無くなってしまったのであきらめて実家へ向かう。
いつものように日没と戦いながら、大和川沿いを疾走する。
なんとか暗くなりきる頃に到着する事ができた。

見るべきものが尽きない(その2) : 大阪府東南部から和歌山へ

実家に泊まった翌朝、実家を起点にさらに自転車で走る。
目的地は和歌山。紀ノ川沿いに走るルートと、国道170号沿いに走るルートが考えられたが
後者の方が馴染みが薄いので、未知の領域を踏破したい気持ちで後者を選んだ。

見るべきものが尽きない : 香芝→富田林→河内長野→水間

奈良県西部の香芝から、まずは大阪側へ抜ける。
ルートは一番標高の低そうな穴虫峠(r703)を選んだ。
峠というのは名ばかりの緩やかな坂を越えて大阪府に入る。


太子町を旧国道170号に向かって走っていると、素通りできない雰囲気の寺院があった。
ここは家族で釣りなどに出かける時によく通る場所で、昔から気になっていた。
どうやら叡福寺という名前で聖徳太子廟を中心とした寺院のようだ。




日本仏教の祖に捧げる
聖徳太子はいわば日本仏教の祖。
最近はその事跡や実在を含めて議論もあるが、信仰の対象としての太子は生き続けるのだろう。
正月らしい供え物が捧げられていた。
[Nikon D200 + Voigtlaender Nokton 58mm F1.4 SL2 / 絞りF2.8]


長年気になっていた場所が見られて満足して次へ進む。
富田林に古い町並みが残っているというので行ってみる。
その町並みは量、質ともに想像以上の物だった。




自衛の象徴
富田林は真宗寺院の興正寺を中心とした寺内町
その中心にある興正寺には隅櫓のような建物があった。
この櫓風の建物は真宗系の寺院によく見られるものだ。
自治と平穏を守った象徴のように存在感を放っていた。
[Nikon D200 + Tokina AT-X PRO DX 12-24mm F4 / 絞りF8]


富田林から国道170号で南下する。
外環と呼ばれる新道は交通量が多く走りづらそうなので、ひたすら旧道を走る。
旧170号は交通量の少ない1.5車線〜片側1車線の道で、自転車には走りやすい。
向かい風と戦いながら進んで河内長野へ。
この日は1月10日で十日えびすの日。
十日えびすは西宮戎が有名だが、河内長野も長野戎で賑わっていた。




商売繁盛を祈って
長野神社の本殿前には列ができていた。
だが「えべっさん」が祭られているのはその左隣。何故かこっちには列ができていなかった。
とはいえ、もちろん熱心に商売繁盛を祈願する人はいて
正面から参拝した後、裏に回って銅鑼を鳴らして参拝していた。
(えびす神は耳が遠いとされ、本殿の裏に回って銅鑼を鳴らして念を押す。)
[Nikon D200 + Tokina AT-X PRO DX 12-24mm F4 / 絞りF8]


河内長野からさらに旧170号を走る。
山間部を走っていると、多宝塔を持つ素通りできない雰囲気の寺院が見えた。
見るべきものが多くてなかなか進まないが、せっかくなので立ち寄ってみた。
寺院の名前は金剛寺高野山が女人禁制だったのに対し、ここは女性も参拝できたので
女人高野とも呼ばれるらしい。(他に室生寺なども女人高野と呼ばれる)
多宝塔以外にも重文の建築が多くあり、これまた見ごたえのある場所だった。




金剛寺 多宝塔 (国重文)
遠目で見て素通りできないと感じたのがこの多宝塔。やはり国重文だった。
多宝塔の二層目は円形の建物に四角形の屋根がつく形になる。
そのせいで対角線方向は特に軒の出(建物から屋根の距離)が深くなる。
そこを大量の組物(建物から出ている小さなパーツ)で繰り出して支えているのが面白い。


色々見ているうちにどんどん予定から遅れていく。
もう次の目的地の水間までは寄り道しないと決めて走る。
緩やかな丘陵地や集落を抜けながら走って、ようやく水間寺の三重塔が見えた。


寄り道封印 : 水間→加太→和歌山

水間寺は計画当初から立ち寄る予定だったので見ていく事に。
初詣にはやや遅い時期だが、境内は多くの人出で賑わっていた。




正月の水間寺
水間寺は三重塔と大きな本堂が目立つが、どちらも再建のようだ。
参拝客が多く、今も多くの信仰を集めているのが印象的だった。
[Nikon D200 + Tokina AT-X PRO DX 12-24mm F4 / 絞りF8]


水間で昼食にしたかったが、それらしいところが見当たらなかったのでそのまま熊取へ。
熊取の駅前で昼食(マクドナルド)。その後は国道26号に平行する道で和歌山を目指す。
この辺りは遅れを取り返すためほぼ休憩なしで走った。


ひた走って岬町へ。頑張って走ったおかげで加太に行ける見通しが立ったので
道の駅"とっとパーク小島"で休憩。
ここは関空の第二滑走路工事のための土砂を搬出した場所を、
魚釣り公園として整備したらしい。面白い再利用法だ。
さらに少し走ると加太に到着。雛流しで有名な淡嶋神社へ立ち寄った。




陰鬱な迫力
淡嶋神社は多数の雛人形が奉納されている。
拝殿の周囲を取り囲むように並べて置かれていた。
日没後の蒼い光に包まれて、異様な迫力を放っていた。
[D200 + Voigtlaender Nokton 58mm F1.4 SL2 / 絞りF2.8]




加太港夕景
時間は前後するが、雛人形の写真で終わるのは後味がよくないので
口直しに加太港の夕景の写真を。
[D200 + Voigtlaender Nokton 58mm F1.4 SL2 / 絞りF5.6]


加太で日没を迎えた。残照に頼って和歌山まで走る。
途中で少し道を間違えたが、すぐに修正して紀ノ川を渡って和歌山市街へ。
和歌山城を外から眺めて、和歌山駅へ。駅前の王将で夕食をとって、輪行で帰還した。

まとめ


一日目
走行距離 : 79.6km
走行時間 : 3時間51分
平均速度 : 20.7km/h
最高速度 : 36.5km/h



二日目
走行距離 : 102.1km
走行時間 : 5時間10分
平均速度 : 19.7km/h
最高速度 : 42.5km/h



レンズ
Tokina AT-X PRO DX 12-24mm F4
Voigtlaender Nokton 58mm F1.4 SL2
Reflex-Nikkor C 500mm F8