海上の道 : しまなみ海道

お盆に帰省していたのだが、その帰省先はしまなみ海道の南端近く。
しまなみ海道は本州の尾道から四国の今治を結ぶ本四連絡道路の一つ。
芸予諸島の島々を向島因島生口島大三島伯方島〜大島と橋でつないで海を渡っている。
重なる島々とそれらをつなぐ橋、そして美しい海が売りのルート。
何よりこのルートのすばらしい所は自転車でも渡れる所。
せっかくの機会なので自転車を持ち帰って走ってみた。

来島海峡大橋(行き)

しまなみ海道南端の糸山(今治市)からスタート。
いきなり最大の見所、来島海峡大橋へ。ここは三連の吊橋で海の難所の来島海峡を渡っている。
全長4.1km、四国側に一番近い来島海峡第三大橋は長さ1570mで日本3位。
この長い橋の上、海面から約65mの高さを自転車で走る。これが気持ちよくない訳が無い。
眺めを惜しむようにゆったりと時間を掛けて渡った。




力線 : 来島海峡第一大橋 [絞り優先AE(+0.7) F8 1/60s ISO-100 CPL]
橋に限らず建築物の根本的な美しさは構造を支える力のラインにあると思う。
橋梁はその力学的な構造がストレートに外見に表れる分、美しさもストレートに表れる。
その力のラインを表現したくて撮った一枚。




碧い砂浜 [絞り優先AE(+0.3) F8 1/50s ISO-100 CPL]
橋を渡りきった先の海岸から振り返ると橋がよく見える。
よりいいポイントを探して少し走っていたら綺麗な海岸があった。
橋一つ渡っただけだが、島の海は透き通る美しさだった。

大島〜伯方島

三連の来島海峡大橋を渡ると大島。
サイクリングロードはこの島の真ん中を突っ切るように走る。
大した事はないが、小さな峠越えもある。
さらに、島と島を結ぶ橋は海上交通のためそれなりに高いところを通っている。
そんなこんなで微妙なアップダウンを強いられる。
この日はとんでもない快晴で体温の上昇が著しい。水をかぶりながら走り続けた。




造船所 (伯方島にて) [絞り優先AE(-1.0) F8 1/40s ISO-100 CPL]
尾道から今治にかけてのこの一帯は造船で栄えた。
造船業が下火となった今でも多くのドックが稼動している。
伯方島で造船所が間近に見られたのだが、その迫力は圧倒的だった。
橋といい、船といい、人間はえらく大きいものを作れるものだ。




迫り来るアーチ : 大三島橋 [絞り優先AE(+0.7) F8 1/125s ISO-100 CPL]
伯方島大三島を結ぶ大三島橋はアーチ橋。
アーチ構造で荷重を支える構造。やっぱり力のラインが見える橋はかっこいい。
ど真ん中にカメラを置けたのでシンメトリー+アーチの迫力をテーマにしてみた。

大三島

大三島の道の駅"多々羅しまなみ公園"で小休止。
伯方島名物の塩を使った"伯方の塩ソフトクリーム"を食べる。
味は遠くに塩の風味がする程度で概ね普通のアイスだった。
最近の塩スイーツみたいにもう少し塩を効かせてもおもしろいと思う。


大三島からさらに次の生口島(いくちじま)へ向かう。
この二島の間をつないでいるのは斜張橋多々羅大橋
世界最長の斜張橋で中央支間長は890m。その塔の高さは220mとかなりの迫力。
渡ってみると斜めに張られたケーブルが角度を変えながら横を通り過ぎていく。
不思議な感覚が楽しい橋だ。




力伝えるケーブル : 多々羅大橋 [絞り優先AE(+0.3) F8 1/100s ISO-100 CPL]
斜張橋は橋の形式の中でも力の伝わり方が特に顕わな形式だろう。
自分が立っている路面を支える力がこのケーブルを伝ってあの高い塔へ伝えられている。
その力が見えるかのような黒いケーブル。上のほうでたわんでいるのもよく分かる。
今回渡った橋で一番気に入ったのがこの多々羅大橋だった。

生口島

多々羅大橋を渡って生口島へ。
生口島でとりあえずの目的地、耕三寺へ向かう。
耕三寺は大正から昭和にかけて活躍した実業家が母の菩提のために建立したという新しい寺院。
そしてここの特徴が日本各地の名建築をコピーした諸堂。
門は日光東照宮の陽明門のコピー、五重塔室生寺五重塔のコピー、etc.etc...
それも、コピーするならコピー元と完全に同じにすればいいのに
微妙にアレンジしてしまっている辺りがまた何とも言えずB級な感じ。
…とけなしているが、割とこういう"勢いで作っちゃいました"というノリ、嫌いではない。




耕三寺 本堂
この耕三寺、コピー元の建築は何だろう?と思いながら眺めると楽しい。
この本堂はかなり分かりやすい部類だろう。宇治の平等院鳳凰堂のコピーだ。
コピーなのはいいのだが、翼廊が派手に作られ過ぎていて印象がかなり違う。
鳳凰堂の翼廊はモチーフとしては鳳凰の翼に相当する訳で
軽やかな感じでその拡がりを表現しているのだが、
この堂では過剰な装飾と閉じられた壁面(オリジナルは吹き放ち)で重くなってしまっている。
しかも、前の池がコンクリートのこれまた重いもの。
オリジナルの、浄土世界を表現しようとした意図が見事にスポイルされている。

因島の入り口〜帰り

耕三寺を見終えた後、とりあえず先の因島へ向かう。
因島へ渡る生口橋を渡った辺りで午後3時。そろそろ帰還の時間なので撤収開始。
生口島は行きと同じルートでは面白くないので南側を走ってみた。
対岸に造船所がある島が見えたりしてなかなか楽しい。


島々が折り重なり、複雑な景色をなす中、大三島伯方島、大島と快適に走り抜ける。
帰り最後の橋、来島海峡大橋手前の道の駅"よしうみいきいき館"で小休止。
ここで軽食と補給を予定していたのだが、店は夕方5時に閉まってしまっていた。
道の駅にしては営業時間が短すぎないだろうか?




下田水港の夕景 [絞り優先AE(+0.3) F6.3 1/800s ISO-100]
大島の出口に相当する下田水(しただみ)の港で夕刻を迎えた。
夕日が反射する水面とたたずむ漁船、遠景に来島海峡大橋
このしまなみ海道はどこを取っても絵になる。


最後は約4kmの橋を渡って四国側へ。しばらく走って帰省先へ帰還。
走行距離は114.0kmだった。