日本の始まりの地 : 山の辺の道

いつものサイクリング。
今回の行き先は奈良にある山の辺の道。
山の辺の道は古代のヤマト王権の始まりの場所。
青垣の山々の麓に数々の古墳や古社が点在している。その雰囲気を味わいに行ってみた。

誘惑を振り切って : 京都→奈良

京都から奈良までは既に確立したいつものルート。
川端通師団街道→京町通で観月橋へ。向島→国道24号→府道70号で木津へ。
木津から県道754号で奈良の裏手へ入る。
この県道754号は小さな峠越えなのだが、ここを越えた時にいきなり見える
東大寺大仏殿はいつも印象的だ。奈良に来た、と実感できる瞬間。


古建築好きとしては奈良には見たいものが山ほどある、まさに宝の山。
東大寺の二月堂や三月堂、新薬師寺の本堂、元興寺の諸堂など興味は尽きない。
薬師寺の三重塔や東大寺の南大門などは何回見ても飽きない。
だが今回の目的地はこの先の山の辺の道なので涙を飲んで通過する。
なかなか誘惑を振り切るのが大変な場所だ。

独特の雰囲気 : 天理

奈良を過ぎて天理へ向かう。天理に入ると独特な気配があって、これまた天理に来たと実感する。
ここは天理教の中心地。街には天理教のハッピを着た人が
(おそらく祭りでもないのに)普通に歩いている。
若い人も結構着ているのがやや意外だった。




天理教本部の本殿(?)
天理教の本部にあった巨大な建築。本殿に相当する建物だろう。
意匠は伝統的な木造建築の物なのだろうが、とにかく巨大。
千鳥破風(屋根を三角形にして断面を見せる飾り)を多用した複雑な屋根を持っていて
なかなかカッコいい。宇宙戦艦とか、SFに出てくる基地とか、そんな感じのカッコよさだ。




天理教の宿舎(?)
天理教では天理が原点の土地で、信者はここに巡礼に来る事になっている(らしい)。
その信者たちのためだろうか、この写真のような建築が街中のいたる所に建っている。
現代の合理主義的な建築の上に、日本風の意匠として強引に屋根が乗ったデザイン。
一種の帝冠建築、といってもいいのだろうか。正直な所、もう少しどうにかならない物かと思う。
後、屋根に千鳥破風つけ過ぎ。
本殿にも多用されていた所を見ると、何か重要なモチーフなのだろうか。

古代の武器庫 : 石上神宮(いそのかみじんぐう)

天理の独特の雰囲気を味わった後、最初の目的地の石上神宮へ。
七支刀を所有する事で有名な神社で、古代はヤマト王権の武器庫の役割を果たしたといわれる。
七支刀は見られなかったが、美しい拝殿を見ることができた。




石上神宮 拝殿 (国宝)
鎌倉時代の建築。入母屋造り桧皮葺の屋根を持つ。
広がりのある屋根のラインが美しい、優美な建築だ。

邪馬台の国の名残り? : 黒塚古墳

石上神宮から山の辺の道を走ろうとしたのだが、
思っていたより道が荒れていて走りづらかったので国道を走りながら所々で寄り道していく。
この辺りは古墳が多く、走っているとこんもりした森が見えてすぐにそれと分かる。
そんな景色を楽しみながら黒塚古墳に寄り道。
ここは三角縁神獣鏡が副葬品として多く発掘されていて、
邪馬台国論争に影響があると言われている。
古墳は史跡公園として整備されていた。




黒塚古墳 (国指定史跡)
黒塚古墳は前方後円墳というタイプの古墳。要するに鍵の穴の形をしている。
その前方部から後円部を向いた写真。古墳の形が良く分かる。
石室はやっぱりこの正面にあったのだろうか。

おおみわ : 大神神社(おおみわじんじゃ)

大神神社と書いて"おおみわじんじゃ"と読む。知らないと絶対に読めない。
この神社は三輪山をご神体山としていて、本殿を持たない。
自然崇拝のアニミズムらしさを色濃く残した、神道の原型ともいえる神社。




大神神社 拝殿 (国重文)
江戸時代初期の建築。
正面中央に千鳥破風と唐破風、左右に裳階のついた少しうるさい感じの建築。
何となく桃山時代っぽい印象を受ける。
この向こうはご神体山の三輪山で、禁足地になっている。




願いの詰まった参道 [絞り優先AE(-1.0) F6.3 1/30sec ISO-200]
大神神社末社久延毘古神社(くえひこじんじゃ)の参道。
ここは学問の神様という事で合格祈願の絵馬が参道の左右に数多く掛けられていた。
この階段にこれだけの思いが込められている、というのを表現したかった。

帰途 : 桜井→橿原神宮前

大神神社に思ったより長居してしまって、夕暮れの時間が迫ってきた。
さすがにここから走っては帰れないので手ごろな駅へ向かう。
橿原神宮前なら急行一本で京都へ帰ることができ
始発駅なので自転車を置く場所の確保もできそう、という事で橿原神宮前へ。
自転車が迷惑にならないよう最後尾の車両を選んだが、帰りの電車は比較的空いていた。
京都駅からは自走して帰還。走行距離は約90km程だった。