こんぴらさんと四国三郎


折角岡山にいるので、岡山を起点にサイクリングのプランを練る。
JRの瀬戸大橋線があるので香川県は容易に手が届く。
以前から行ってみたかったこんぴらさん(金刀比羅宮)と、徳島県を流れる吉野川をセットに走る事にした。

785+583段 : 坂出→琴平(金刀比羅宮/旧金比羅大芝居)

岡山から快速マリンライナーで瀬戸大橋を渡る。瀬戸大橋を渡った最初の駅、坂出で下車。
自転車をセットアップして走り始める。まずは最初にして今回の旅最大の目的地の金比羅山へ。
国道438号から国道32号へと走る。比較的平坦な道を流して琴平に到着。


金刀比羅宮は長い石段で有名。一度その石段のキツさを体感してみたかったのだ。
そういう訳で、長い石段をワクワクしながら登り始めた。




TAXI
石段の序盤は門前町仲見世を抜けて行く。色々な店があって飽きさせない。
人出も多く、結構賑わっているのがこんぴらさんの繁栄っぷりを示している。
店の中には石段を駕篭で担いであがる"タクシー"もあるようだ。
担ぐほうは二人掛かりとは言え大変そうだ。
[ Nikon D200 + AF-S DX Nikkor 18-55mm/F3.5-5.6 VR ]




ラストスパート
写真の石段を上がりきれば、石段785段、標高236mにある金刀比羅宮の本殿だ。
この長い石段は部活のトレーニングにも使われているようで、
タイムを測ってダッシュで上がっている人たちもいた。
[ Nikon D200 + AF-S DX Nikkor 18-55mm/F3.5-5.6 VR ]




馬風俗今昔
金刀比羅宮は海運の守り神として有名だ。絵馬堂には数多くの船の写真が奉納されていた。
写真の左に有るのは絵馬の原型ともいえる、文字通りの"絵に描いた馬"だ。
絵馬奉納の風俗には絵と写真という今昔の違いはあれど、その意識は通じる物があると感じさせられる。
[ Nikon D200 + AF-S DX Nikkor 18-55mm/F3.5-5.6 VR ]


金比羅山には本殿の先、さらに石段を登った所に奥宮があるようだ。
ここまで来たら石段を完全制覇しておきたいのでさらに登る事にした。
参拝客で賑わう本殿までの石段とは違い、一転して人気の少ない静かな石段を黙々と登る。
奥宮は本殿から583段、下からの合計では1368段、標高は421m。もはやちょっとした登山だ。
奥宮からの見晴らしは中々のものだが、見渡せる角度は本殿からの方が広かった。


ちょっとした登山をしてしまったおかげで予定よりもだいぶ時間が掛かってしまった。
徳島県へ向けて急ぎたい所だったのだが、金刀比羅宮の参道入り口近くに
国重文の芝居小屋があるらしいと聞いては素通りできず、立ち寄って行く事に。




金丸座(金比羅大芝居) [国重文]
金刀比羅宮門前町にある芝居小屋。江戸時代(1835)の建築で現存最古の歌舞伎小屋らしい。
少し前に京都の南座で歌舞伎を見た印象が残っているので非常に面白かった。
花道も舞台も自由に歩く事ができるのが楽しい。
客席は前列から後列に向かって上り勾配になっていて、どこからもよく見えるように工夫されている。
二階席もこの時代からあった事が分かる。(写真の背後の二階にも座席がある)




廻り舞台の舞台下
ここの金丸座では舞台裏や舞台の下も見学する事ができる。
廻り舞台の下にあるのが写真のような仕掛け。人力で棒を押して回転させる。
他にも花道の下から飛び上がるセリの仕掛け(これも人力でえいやっと上げる)も見る事ができて興味深い。

意外としんどい峠越え : 琴平→[r4]→三好

当初の予定では琴平は1時間半くらいで観光できるだろうと思っていたのだが、
実際には3時間ほども掛かってしまった。
後半の旅程が厳しくなるので大慌てで走る。
サイクリングに峠越えが無いと"走った感"が足りないので、今回も峠越えを組み込んでみた。
香川県徳島県の間には讃岐山脈(or阿讃山脈:徳島側の呼び名)が横たわっている。
いくつもあるこの山脈を越えるルートから、今回は県道4号の東山峠を選んだ。


県道4号は一車線の細い道。交通量も無く静かなルートだ。
標高約630mの峠まで7kmほどもある登り坂をゆったりと上がっていく。
いいかげん疲れてきたと感じ始めた頃、峠に到着。ここからは徳島県に入る。
相変わらず道幅の狭いつづら折れの道を下って、吉野川が流れる旧三好町(東みよし町)に到着。
徳島で三好という事は、阿波から近畿にかけて勢力を持った戦国大名三好長慶の出身地なのだろうか。

四国三郎 : 三好→[r12(撫養街道)]→脇町→阿波の土柱

ここからは吉野川に沿って走る。東流する吉野川沿いには北岸を走る県道12号
(撫養街道(むやかいどう))と南岸を走る国道192号があるが、今回は北岸の道を使った。
まずはうだつの街並みで有名な脇町へ。
脇町は結構長い距離に渡ってうだつの上がった商家が軒を連ねていて見応えがあったが、
到着した時間が遅く、商家の中を見学できなかったのが残念だった。


さらに、近くにある観光地の阿波の土柱へ向かう。
指示標識に従って走ったら、どうやら遠回りさせられてしまったようでちょっと苛立つ。
阿波の土柱はイタリアのチロル、アメリカのロッキー山脈と並ぶ"世界三大土柱"との事だが…
結構あっさりした物だった。味わい方がイマイチよく分からない。




四国三郎の勇姿
四国三郎というのは坂東太郎(利根川)、筑紫二郎(筑後川)と並び称される吉野川の別名。
その名にふさわしく、吉野川は広い河原を持つ雄大な川だった。
(まあ、さすがに利根川は比較にならないほど大きいと思うが。)
走っている途中、"二郎"に相当する川が思い出せなくてずっと気になっていた。
岡山に帰った後、早速インターネットで調べた。筑後川にもいつか行ってみたいものだ。

無心に走る : 土柱→[r139,r12]→阿波市→[r14]→池谷

土柱から県道139号、県道12号で阿波市の東端まで走る。
そろそろ暗くなりかけていて、帰りの電車の時間も気になり始めた。
当初は徳島市へ向かうつもりだったが、安全のためにより近くで
鉄道路線に合流できる県道14号で北東へ進む。


黙々と走って板野に到着。ここでようやくJRの高徳線にぶつかって一安心。
既に夜になっていたが、折角なので四国八十八ヶ所の一番札所霊山寺(りょうぜんじ)へ立ち寄る。
真っ暗だったのだが、山門に金色の納め札(寺院に参拝した証として納める札)があるのを見つけた。
納め札の色は八十八カ所をコンプリートした回数によって違い、
1〜4回は白色、5〜6回は緑色、7〜24回は赤色…とランクが上がっていく。
そして金色は50〜99回(100回以上は札の素材が紙から錦になる)、すさまじいものだ。


霊山寺から少し走って高徳線鳴門線の分岐駅、池谷(いけのたに)駅で終了。
自転車をたたんで汽車(高徳線は非電化)を待つ。
各駅停車に乗って高松、高松からかなり遅い時間まで走っている快速マリンライナーで岡山へ帰還した。




夜の駅
池ノ谷駅は分岐駅なので人がいるのかと思ったら、ひっそりとした駅だった。
暗闇の中、ぼんやりと駅名標に照らされるベンチが印象的だった。

まとめ


走行距離 : 130.5km
走行時間 : 5時間57分
平均速度 : 21.9km/h
最高速度 : 47.0km/h